酪農ヘルパー第43号(平成16年7月)

目 次

視点:これからの酪農ヘルパー事業について
特集:私の理想とする酪農ヘルパー事業
海外情報:ニュージーランド酪農
新規就農情報:第3回新規就農情報交換交流会
VOICE
時の動き:H16年度酪農ヘルパー事業について
あの町この町
技術情報
新規就農・酪農体験実習レポート


視点:これからの酪農ヘルパー事業について考える


農林水産省生産局畜産部畜産企画課 畜産総合推進室長 水田 正和

 私が、以前、岩手県庁畜政課に出向していた平成4、5年の頃のことであるが、酪農経営発表会の後の懇親会で、ある酪農家の方から次のようなことを言われたことが印象に残っている。それは、「これまで行政にはいろいろな補助金や事業を作ってもらったが、この酪農ヘルパー事業ほど酪農家がありがたいと思っているものはない。この事業のおかげで、冠婚葬祭の時にも困ることがなくなり、また、こうした経営発表会へも出席できるようになった。」というような話であった。「酪農ヘルパー円滑化対策事業」が創設されて2〜3年が経過し、酪農ヘルパーの恩恵が酪農家にとって実感でき始めた頃であったと思う。
 その後10年を経て、一昨年、私は再び畜産関係に携わることとなり、昨年7月からは酪農ヘルパー事業も担当することとなった。この間に、酪農ヘルパー事業は着実な発展を遂げ、平成15年8月現在で、利用組合数は375 、そのカバー率は95.4%となり、利用農家1戸当たりの年間利用日数も平成14年度で15.6日、(北海道で14.2日)と月1回以上に達している。しかしながら、酪農経営における家族1人当たりの労働時間は、都府県で約2,150 時間、北海道では約2,650 時間であり、他産業に比べてまだまだ長く、その削減の観点からは酪農ヘルパーのさらなる利用促進が課題となっている。
 確かに、これ以上料金を払ってまでさらに休日を取るという気にはなれないという酪農家もおられると思うし、経営者という観点からは「他産業並みの労働時間で他産業並みの所得を」という目標はなじまないのかも知れない。しかし、次代を担う後継者や新規参入者にとって、酪農という産業を魅力あるものにしていくためには、労働時間の削減は避けて通れない課題である。
 さて、現在、農林水産省においては、新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けての検討が進められているが、その中で、農業の担い手のあり方に関連し、ヘルパー、コントラクター等の経営支援組織、作業受託組織についても議論されている。こうした農業サービス事業体が地域農業に貢献していることを踏まえ、農政上どう位置付けその育成を図るかについてである。言うまでもなく、酪農ヘルパーは、酪農家にとって、休日確保、病気や冠婚葬祭時の作業代行等「ゆとりある酪農経営の実現」のために不可欠であるとともに、新規就農を希望する者が実地経験を積む場としての機能も果たしている。こうした役割を持つ酪農ヘルパーに対する助成は、農業サービス事業体への支援としては先駆的なものであるが、農政全体としてサービス事業体について議論される中で、酪農ヘルパーについても改めてその位置付けを明確化していくことが求められている。
 酪農経営は、近年、乳価や需給が安定していることから、経営状況は全体的には良好だが、一方では、WTO農業交渉は7月の枠組合意に向けて予断を許さず、また、酪農関係に利用できる農畜産業振興機構の自主財源は急減しているなど厳しい面もある。酪農ヘルパーに関しても、昨今の低金利の下で利用組合への支援を引き続き行っていくため、今年度から都道府県事業基金を果実運用型から取り崩し型に移行することとしている。
 こうした状況の中、それぞれの地域のヘルパー利用組合においては、様々の積極的な取り組みが行われている。例えば、ヘルパー利用組合の業務範囲を拡大し、資料生産やふん尿処理・利用などの作業も行うことや肉用牛ヘルパーの事業にも取り組むこと、ヘルパーの身分保障の確立等の観点から農協組織との連携を強化することなどである。こうした取組の中に、今後の酪農ヘルパーを考えていく上でのヒントがあると考えられ、現場におけるこうした先駆的な取組が広がり発展していくことが大事である。「酪農ヘルパー円滑化対策事業」の創設から十数年を経たこの時期に、ヘルパーや利用組合のあり方も含め酪農ヘルパー制度の推進について、改めてしっかりと取り組んでまいりたい。


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