酪農ヘルパー第43号(平成16年7月)

目 次

視点:これからの酪農ヘルパー事業について
特集:私の理想とする酪農ヘルパー事業
海外情報:ニュージーランド酪農
新規就農情報:第3回新規就農情報交換交流会
VOICE
時の動き:H16年度酪農ヘルパー事業について
あの町この町
技術情報
新規就農・酪農体験実習レポート


新規就農情報



第3回新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」に参加して

 去る5月22日、23日の2日間にわたり、北海道とかち清水町で第回新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」が開催された。この交流会は地元農業関係有志が実行委員となり、新規就農希望者や酪農ヘルパー、新規就農の先輩など、農業に関わる人達の個人参加による情報交換の場として開催され、今回で3回目となる。 本誌では、この交流会のスタッフ、・清水町農業振興公社事務局長の米光良一さんと酪農実習生の猪内勝利さんに交流会の様子をレポートしていただいた。
第3回新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」
開催日 平成16年5月22日(土)、23日(日)
場所  北海道とかち清水町 清水町農業振興公社
主催  第3回「清水に集まれ!」実行委員会 棚田利次、橋本晃明
*詳しくは、メールまでご質問ください → hashimoto.t @r3.dion.ne.jp

参加者主役のシナリオのない交流会

(財)清水町農業振興公社 事務局長  米光良一

 突然、後方からの「集めれば何とかなるさ。だから次回は頼むよ!」、「わかりました!」と言う何気ない会話が私の耳に入りました。この会話、実は、前日夜から朝方まで・清水町農業振興公社を主会場に行われた新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」が終了し、寝不足の目を擦りながら後片づけをしていた時のことで、この交流会の最初の仕掛け人である地元農業者が次回開催に向けて、後継の農業研修生に語りかけていた一コマです。この会話に私の首が思わず縦に反応しました。
  平成16年5月22日(土)・23日(日)、当町において第3回の新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」が、地元農業者関係有志が実行委員会を構成しインターネットを通じて全国に参加を呼びかける形で開催されました。
  もちろん、第1回目も第2回目も同様の形で当町で開催され、その勢いをもって本年も引き続き第3回目として開催するに至ったと思いますが、私自身は自らの業務の関連もあって、この交流会に今回初めて参加する機会に恵まれました。
  実は、私はこの4月に町から今回の交流会の会場となった「・清水町農業振興公社」に派遣されたばかりです。
 清水町農業振興公社は、農業者(経営者、担い手)と土地(農地等)を中心とした、錯綜する農業問題を総合的に支援することを目的に、平成11年12月に町・農協出資による北海道では最初の市町村公社(公益法人)を設立したものです。したがって、多くの市町村では農業委員会が抱えている「担い手対策」について、本町では当公社が中核事業の一つとして取り組んでいます。このため、今回のような新規就農に伴う交流会の場としての利用は誠に最適で、当公社の業務を担当する者としてこの上なく嬉しく思っています。
 さて、私自身、実際に交流会に参加してみて「なるほど!」と頷くことが非常に多く、予想どおり充実した時間を過ごすことができました。ついては参加者各位に心から感謝申し上げるとともに、今回の交流会を終えて特に印象に残った点を感想として少し申し述べさせていただきたいと思います。
 冒頭で、交流会開催後の後片付けの際の一コマとして、今交流会の仕掛け人が次回の開催を後継に託している会話の一部「集まれば何とかなるさ!」という言葉について触れたのは、実は、この言葉こそが、この交流会の根本的な狙いを秘めていると私自身が強く感じ取させられたからです。それ故に、会場の後片付けをしながら聞こえてきたこの言葉に、思わず私は反応し思わず頷いてしまったのです。
 つまり、交流会の主役は呼びかけに応じ集まった個人としての参加者であり、呼びかけ人でも他のどの団体・組織でもありません。集まった参加者それぞれが自然体で交流の流れをつくり盛り上げていくのです。事前に用意されたのは大まかな交流会日程と、視察、交流会会場だけで、交流会の詳細な進行スケジュールやシナリオはもちろんありません。しかも、視察時間と交流会開始の時間が大きく空いています。これは、呼びかけ人や参加者の多くが酪農家や酪農関係者で、自らの参加可能な時間が制約されており、それに合わせた時間を組まざるを得ないためです。また、この空いた時間の参加者への配慮・気遣いは一切無く、参加者それぞれが気ままに空いた時間を過ごすだけです。そんな交流会であるにも関わらず、道内外から40名を越える主役達が集まりました。これまで開催した2度の交流会でも50名前後が集まったと聞いています。しかも、集まった者のほとんどが乳牛を扱う仕事柄、決して時間が自由につくれる人達ではなく、皆、わずかな時間を割いての参加です。
 肩書きなどは全て外し、肩肘張らない参加者が主役の自主的で自由な交流会。今回の交流会で、参加者全員と会話するには至りませんでしたが、就農を目指し農業実習に励んでいる方、すでに新規就農した方、就農が決まりその準備に追われている方、酪農ヘルパーとして活躍されている方、牧場に勤めている方など、多くの就農を目指す方々の話を聴くことができました。そして、それぞれの目の輝きや話の節々から、彼らが常に自分たちの活動の中で常に情報発信に心がけてきたことが良く分かり、また情報吸収への貪欲さも伝わってきました。この交流会が、単に新規就農に伴う情報交換ではなく、そこに参加した者同士が互いに自ら持っているものを損得抜きで全て分かち合う場として大きな力を発揮している点に驚き、参加者一人ひとりに煌めきとパワーを強く感じたのは、恐らく私だけではないと思われます。
 集まりを持つことそれ自体の重要性と、その後は「何とかなるさ」という一見投げやりだがそこに秘められた緻密な狙い、そして誰が強制するではなく、集う仲間達の自然の流れに任せて貴重な時間を共有する意味が、この交流会が盛会の内に終了した今、しっかりと理解できた感じがします。すなわち、交流会の名称こそ「新規就農情報交換交流会」としていますが、そこには情報のやりとりだけではなく、新規就農を目指す者同士の意見交換、すでに新規就農した者や既存の農業者からの経験談やアドバイスなど、純粋なやりとりとして互いの力を分け与えるところまで及んでいるのです。
 最後に、ある農業ジャーナリストが「農業を取り巻く環境はユートピアとはほど遠い。新規就農者の直面する現実は、ことさらに厳しい。それにも関わらず、彼らが明るく楽天的に見えるのはの何故だろうか。彼らの無鉄砲ともいえる強さに未来があるのかも知れない」とある記事でコメントしているのを記憶していますが、私も今回の交流会に参加して、このジャーナリストと同様、現実の厳しさは確かにあるが、その中で一見無謀に見えるが純粋に農業に夢を託す若者達に不思議な力を感じたとともに、このように自らの希望の実現に向け積極的にチャレンジしている姿が近い将来実を結び、今後、多くの新規就農者が生まれていくことを真に期待したいと思います。

営農は地域の絆の中に存在している

北海道十勝清水町 酪農実習生(新規就農希望) 猪内 勝利

 私は酪農家になることを夢見て、サラリーマン生活に終止符を打ち、昨年4月に北海道に渡ってきました。最初の1年間は・鹿追町デーリィーサービスカンパニィでヘルパーとして勤務し、今年4月から縁あって交流会の主催者の1人である橋本牧場に従業員として勤めながら、就農を目指しています。「清水に集まれ!」には、スタッフとして、今年初めて参加しました。交流会の内容と感想を報告します。
  交流会では、昼は2軒の牧場見学、夜は懇親会がプログラムとして組まれました。
  牧場見学では主催者の1人である橋本牧場と今秋から営農を開始する新規就農者の野田牧場で行われ、30名以上の参加者がありました。
 橋本牧場は、5月上旬に牛舎が全焼し、見学当日も復興途中でした。火災当時、搾乳牛は放牧地に出ていたため難を逃れました。見学することになった理由は、順調に営農していても、いつ何時予測できないような事態が発生するか分からないこと、またそのときに経営者としてどのように考えたかを、これから酪農を新規でやろうとする人達に、目で見て、知ってもらいたかったからです。
 火事当日から、近所の酪農家・畑作農家、農協の組合長、専務、職員、酪農関連会社の方々などが一斉に集まり、簡易パーラーの設置、牛舎の後片付けがあっという間に行われました。橋本さんはこのときの状況を「牛舎が全焼し、これからどのようにしていけばいいのか?など考える間もなく、近所の酪農家の方々が話し合いながら、火災発生から8時間後には簡易パーラー、処理室が設置され、営農できる体制が整った。自分の意思に関係なく、営農を継続しなければならないという大きな力を感じた。酪農経営では飼養管理技術が大切なことと考えるが、実際にはどんな状況においても挫けることがない精神力が重要と改めて思う」と話されていました。
 私自身、火事発生から一部始終を経験しました。その経験の中で、営農は地域の強い絆の中で存在していることを強く感じました。火事で駆けつけた酪農家、畑作農家は朝から晩まで、自分の牧場のことよりも被害にあった牧場の復旧を優先していました。まさにこれが、橋本さんが話された「営農を継続しなければいけないという大きな力」ではないでしょうか? 新規就農を目指す人達に、「経営は個人であるが営農は地域の支えが必要であり、逆に自分が地域を支える気概が必要だ」というメッセージがあるように思います。
  2軒目の今秋から営農を開始する野田牧場は、老齢を理由に離農された牧場で、北海道農業開発公社のリース事業の対象となり、就農が実現しました。
 見学したときは、空き牛舎のままでした。就農予定者から、自分の理想とする牧場にするべく、古い牛舎をどのような形で活用するか、どのように手直ししていくか説明を受けました。夢にあふれた説明に羨ましく思いながら、自分も早く夢を実現したいと改めて思いました。また、就農した先輩からは、「経営の成功のためには、5年後に搾乳牛が増加していることが絶対条件。牛舎のレイアウトや改造は熟考してから行うこと」と貴重な意見もありました。新規就農を目指す人達にとっては、自分の夢を再認識するよい機会となったのではないかと思います。
  酪農ヘルパーから就農した先輩は、「酪農ヘルパーとして様々な酪農経営に携わることができたので、自分が就農するときに、大きな財産となっていた。酪農ヘルパーは、新規就農を目指す方に経験してほしい職業」と話されていました。
 夜は、メイン(?)の懇親会です。放牧地で肥育されたブラウンスイスの去勢牛を焼肉として食べながら、実習生、牧場従業員、酪農ヘルパー、新規就農者、酪農後継者、酪農ヘルパー協会の方々、酪農関係機関の方々45名が、深夜遅くまで盛んに意見交換をされていました。今回の参加者の中に、1人就農された女性経営者がおられ、その方の話に興味が集中していました。(余談ですが、青空の下、放牧地で肥育された肉は霜降り肉ではなく赤みの肉でした。柔らかく、甘味のある肉で、たくさん味わいながら食べられました)
 この交流会の開催趣旨は、新規参入を目指して日々頑張っている、あるいは農業の世界に生きがいをみつけようと頑張っている、農業実習生、酪農ヘルパー、牧場従業員、乳検検定員や、親を追い越そうと日々頑張っている農業後継者、おせっかい焼きの農家、恩返しの機会を待っていた新規参入の先輩たち、いろいろ伝えたいことを持っている関係機関の方々…等々、農業に関わるすべての人達の個人参加による新規就農の情報交換です。この交流会に参加した人達の中から、3組の方々が就農につながっています。今秋に就農する家族も第1回目から参加して、この交流会に参加したことが縁で就農できたと話されていました。
  この交流会は第4回目も企画されますので、新規就農を目指す人達に積極的に参加してほしいと思います。またスタッフとしての参加も大歓迎です。
  交流会を通じて、多くの仲間と貴重な情報交換や横のつながりができたように思います。このような企画にスタッフとして参加できたことは、今後自分が就農するときに大きな助けとなるように思います。


前のページ次のページ