酪農ヘルパー第43号(平成16年7月)

目 次

視点:これからの酪農ヘルパー事業について
特集:私の理想とする酪農ヘルパー事業
海外情報:ニュージーランド酪農
新規就農情報:第3回新規就農情報交換交流会
VOICE
時の動き:H16年度酪農ヘルパー事業について
あの町この町
技術情報
新規就農・酪農体験実習レポート


海外情報:ニュージーランド酪農


全農酪農部 深松 聖也
 3月20日から1週間、ニュージーランド(以下NZ)研修に参加させていただきました。酪農ヘルパー全国協会の方々他、関係各位に心よりお礼申し上げます。 感想としては、・環境を含めた国の特徴を生かした社会を作っている、・自然を守る事で環境を維持できる(自然の浄化作用)、・田舎でのんびりした生活の中でも常に諸外国に目を向けている、・酪農業が無理なく楽しく営まれ社会的な役割を担っている、等がいたるところで感じられました。

研修後記 Robert Mouritsファームステイ(北島オハウポ) Rob's FARMと酪農形態

 NZの酪農形態にはオーナーオペレーター(日本でも一般的な経営)とシェアミルキング農場の大きく二つに大別される。後者にはシェアミルキング制度というものがあり、簡単に言うと一酪農経営を牧場主(オーナー、牧草地と搾乳場を提供)とシェアミルカー(牛と機械を所有し管理を任される)で利益を分け合うというもので、NZ産業として地位の高い酪農に集まる若人がシェアミルカーから始め、経験と財を得ながらオーナーオペレーターになり、年を経てオーナーになっていくといった競争原理も働く酪農のサクセスストーリー的この国特有の制度である。 ロブファームにおいてもやはり同様のようで、以下経歴を記す。 ・27年前(1977年)シェアミルカーとして100 頭の 牛を所有・3年後(1980年)結婚、240 頭を所有 ・1983年に土地40haを取得しオーナーオペレーター になる・1989年10ha取得、計50ha、乳牛160 頭 ・1991年25ha取得、計75ha、乳牛250 頭・1995年40ha取得、計115ha 、乳牛350 頭 ・2002年80ha取得、計195ha 、乳牛600 頭、 現在に至る 家から徒歩2分の搾乳場は1周50頭(7〜10分)のロータリーパーラーで、そこから見る195 haの放牧場は壮観で、3月下旬は初秋で心地よく、区分けされた放牧場から600 頭の牛がキャトルドッグに導かれながら搾乳場に歩いてくる光景は美しい。 3日間搾乳体験を行った。ミルカーの装着のみ、自動脱着。ディッピングも前搾りもしない、搾乳後牛が横切る機械からの自動ディッピングのみ。ただし乳房炎、3本乳の牛はわずか。乳量も少ないため600 頭は2人が1時間半程度あれば余裕で終了する。

ロブの家族とNZ国

【家族構成】牧場主ロブ(48)、妻(45)、双子姉妹(19)、長男(17)、次男(15)、3女(11)、4女(9)の8人。 酪農経営同様、家族も家も増加、拡張を重ねる大所帯。ただしこれが一般的かというと、NZ国は昨年人口400 万人を突破し増加基調であるが出生率は日本の1.3 人より低い水準にある。この国は都市中心に移住者が増加しており、後に訪れたオークランドで見た外国人の多さがその象徴であった。いかに少ない人で産業を守っていくかがこの国の根底にはあり、酪農の発展にもつながってきた。ロブもオランダからの移民であった。

NZ草地酪農

  NZの酪農は飼料自給率が非常に高い。ただし、100 %ではなく、この牧場においても、500 頭以上の搾乳を行うには190ha の草地では栄養価的にも不足するため、デントコーンやグラスサイレージを購入していた。 NZでは、面積当たり何頭の牛を飼っているか(ストッキングレート)が、酪農家の技術の指標になり、草地当たりどれだけの生産をあげられるかが重要となる。 ただ今回、私自身飼料に関する知識が乏しいため詳しい事情や実態は把握できなかったが、放牧一つとっても多牧区輪換により効率的な給与と草と土壌の維持がなされているものと思われる。生産コスト的には日本の1/5以下である事は日本で真似のできない多くの環境要因もあるが、昨今世の中を賑わす家畜の病気等、集約的な生産向上を追い求めざるを得なかった畜産物の生産に波紋が投げかけられている。NZの環境循環型酪農が、日本における低コスト酪農と消費者に求められる畜産物の生産を目指す場合の参考にすべき点も多いと思われる。

生乳生産と乳価、そして休暇

 ロブの牧場では昨年約2,500 tの生乳を生産しているが、この国の取引は固形分あたりで決められるため重要なのは220 tの乳固形分である。生乳のほとんどが乳製品になるこの国の牛は草を乳製品に換える機械であり、草地を中心に酪農経営は営まれている。400 万人の人口とほぼ同数の牛がいるこの国は、できた乳製品の95%以上を輸出する。そのため、乳価も国際需給、つまり為替の影響を大きく受ける事となる。直近のドル高基調を受けてか、乳価は数年前の5ドル超から3.5 ドル程度になっているという。NZドルの価値も大きく変動しているため、単純比較はできないが動きは激しい。 また、いくつかの酪農家を訪ねて改めて知ったのが、草地条件に合わせた季節生産であった。搾乳牛は10月後半〜11月にAIを行い、5月中旬から一斉ドライ(乾乳)、そして8月に分娩、搾乳。6、7月は一部の飲用地帯のみ生産される。飲用中心の日本では、夏場の飲用向け生乳の不足と冬場の余剰乳という需給ギャップに悩まされている。需要期生産に向けた取り組みがされようとする一方、牛体への負担を強いられる。手がかりを得るには環境のギャップが大きすぎる。

輸出とフォンテラ

 NZの総輸出額に占める農産物の割合は過半数を占めており、NZにとっての農産物の輸出は外貨獲得上豪州以上に重要な地位を占めている。酪農品においてはNZ全輸出の約20%と基幹産業となっている。 また、NZには国内生乳生産の95%を処理・加工・販売する巨大酪農協兼メーカーのフォンテラが存在する。NZデイリーボードが解体し巨大農協との合併によりできたフォンテラは、国から排他的輸出権利は付与されていないが、実質的に排他的輸出権利を持っており、諸外国からの生産者ボードに対する非難に対応しつつも、国内生産者の利益に配慮した法改革を実施している。



  一週間という期間でどこまでこの国の事が理解できたかは疑問ですが、補助金が撤廃されても競争原理を働かせ活力ある産業を作る前向きな姿勢は、オークランドの街と共に全世界を楽しんでいるように感じました。


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