酪農ヘルパー第43号(平成16年7月)

目 次

視点:これからの酪農ヘルパー事業について
特集:私の理想とする酪農ヘルパー事業
海外情報:ニュージーランド酪農
新規就農情報:第3回新規就農情報交換交流会
VOICE
時の動き:H16年度酪農ヘルパー事業について
あの町この町
技術情報
新規就農・酪農体験実習レポート


特集:私が理想とする酪農ヘルパー事業


〜これでいいのか 酪農ヘルパー事業〜


北海道・鹿追町

ヘルパーは酪農の経営的を感覚を持て

鹿追町ディリィサービスカンパニィ代表取 締役  加納 茂
 毎朝、会社の事務所は大賑わい。作業が終わって戻ってきたヘルパーさんが作業報告書を確認したり、次の仕事の打ち合わせやら、農家であったいろいろな出来事の話題に雑談が混じり小さい声では届かない。事務の人もかかってくる電話に片耳をふさいでの対応、一方では失敗を事故報告書にそっと書いている人もいて、とても明るく楽しい時間です。
 会社の側からみたヘルパー事業は、現在20名のヘルパーと2名の事務職員とで希望と緊急をこなしていますが、悩みはヘルパーさんの就業年数が短いこと、やっと安心して仕事が任せられる頃に、就農や結婚で退職する人が後を絶たないので、いつも新人を数名抱えているといった状況です。
  ヘルパーさんの技術は、経験者はもとより始めての人でも会社の徹底した研修で一応の仕事はこなせるようになりますが、欲を言えば酪農の本質にせまる経営者的な感覚のヘルパーさんが望まれます。
 また、運営面においては農家の希望による派遣に重点を置き、強制的な割り当ては極力行わない方針でいます、これは農家が希望しないのにヘルパーさんが来ることにより、経営的なありがたみも薄らぎ、また心情面でも感謝の気持ちが薄らぐ心配があります。今のところ派遣日程は100 %希望で埋まっていますが、これは、農家の利用予測とそれに見合ったヘルパーさんの確保といった綱渡り的なバランスが必要で、会社もいろいろと頭を痛めているところです。ちなみに当組合の運営方法は年間の定休型が半分、残りが毎月の希望と緊急対応と言ったところです。
  一方酪農家の側から見た場合、この事業がすっかり定着しているだけに、ヘルパー無しでは考えられない酪農家が多くなってきています。
 以前には考えられなかった家族での長期の旅行、一つの地域でのまとまっての1泊研修等この制度が無ければ考えられないことでした、また、最近の特徴として、休みのためにヘルパーを取る酪農家が多くなってきました。我が家もそうですが、いついつは休みだと思うと、やはり楽しみでつい仕事にも力が入ります。いつも十分な休養をとるために2連休でヘルパーを取っていますが、特に息子は、今度の休みには何をしようかといろいろ計画を立てたり、遠方の友人と連絡を取ったりしています。やはりこれからの若い人には年中無休の酪農と言うのは過去の話なのでしょう。 また、緊急対応の有益さは休日型の比ではありません。一家の大黒柱が怪我なり病気なりで長期間の療養が必要になった場合、大型化している酪農では経営の存亡がかかります。過去に経営主が病気で6ヶ月ヘルパーを派遣した経緯がありますが、この場合でもこの制度がなければ果して同じ規模の経営が続けられたか疑問に思います。
 いずれにせよ3K職場の代表格だった酪農もヘルパー、コントラと言った外部からの支援体制で大幅に改善されつつあります。そして、この組織を維持、発展させるためには、それを担ってくれる若い人がいるからこそで、毎日忙しいヘルパーさんに心から感謝したいとおもいます。

岩手県

期待に応えられる酪農ヘルパー組合へ

岩手県胆江地区酪農ヘルパー利用組合 組合長 山口 秀雄
 胆江酪農ヘルパー利用組合(役員5名、監事2名、任期2年)は、県南部に位置し酪農主産地の金ヶ崎町を中心として営業していた金ヶ崎酪農ヘルパー組合を基礎にして、平成3年、2市3町1村に拡大した広域組合として再スタート、13年には10周年を迎えることができました。
【利用拡大対策について】
 ヘルパーの利用拡大には、農家のニーズに応える必要があり、組合員が必要とするとき必要なだけ、いつでも利用できる組合を目指しています。農家は質の高い仕事を要求し、ヘルパーを指名したい向きがあります。しかし、現在のところ指名制はなく、今後の検討課題となっています。また、職員の資質の向上を図るべく、採用時の研修を重視するとともに、随時職員会議を開催し、職員の意見を採り入れていきたいと思います。全国研修会には、昨年度2名派遣し、職員からも好評であり今後とも派遣する予定です。むしろ研修しなければならないのは、何も職員だけと限ることてはなく、組合員も日々研鑽する必要があり、年に一度、著名人の方や、活躍され成果を上げられている方を招請して全体研修会を開催しています。
【今後の課題】
・定期利用者の拡大を図る。
・酪農ヘルパー基金果実の減少による補助金の減額への対応を考察する。
・税対策をいかにするか。事業税については、免税申請、税法改定により消費税は課税事業所としての扱いを受けることになり、事業の特殊性で人件費が大半であることから納付税額も多額にならざるを得ないのが現状である。
・ 傷病時利用円滑化特別事業は、平成16年までの助成事業と認識していますが、当組合としては、利用者負担緩和と該当する酪農家の事業継続の観点から計り知れない効果があり、継続されるべきものと要望する。
・もう一つの酪農ヘルパー事業の使命とも言える後継者対策を展開しなければならないず、全国の先進事例を取り入れたい。
【思うところ】
 昭和50年酪農家戸数16万戸、平均飼養頭数11頭、平均乳量4,500 ・、全国で500 万t生産されていました。平成14年には、戸数3万戸まで減少、全国で840 万t生産され、平均飼養頭数は50頭を超え、1頭当たり生産量も7,500 ・を超えています。しかし、全国の生産量は平成8年を境に緩やかに下降線を辿っているといいます。いわゆる環境対策構築と相まって戸数減少に規模拡大が追いつかないのが実状です。私のように学校給食で脱脂乳を飲んだ世代からすれば驚くべき数量には違いないのですが…。
 昨年秋米国を視察しましたが、アメリカでも過去10年間で46.2%の減少、一方では規模拡大が進み、特にカリフォルニア州では725 農場が500 頭以上のメガファーム化しています。日本において、カリフォルニア州と同様のことが起きることは考えにくいのですが、法人育成や、税法改正と相まってさらに規模拡大傾向は進むであろうことは容易にうかがい知れるところです。
  私の願うところは、環境と調和した、家族経営農業を中心とした経営が、持続できることであり、この家族経営支援のために、酪農ヘルパー組合を充実したものとするべく思いを巡らしてまいります。

兵庫県

広域酪農ヘルパー制度の推進と確立について

摂丹ヘルパー利用組合長 兵庫県酪農ヘルパー利用組合推進協議会副会長 波多野 省三
 酪農経営において、最も重要な事業の一つが酪農ヘルパー事業であり、酪農家が緊急時の利用に加え、他産業同様の「ゆとりある経営」を営むために、平成6年利用農家14戸、ヘルパー2名(うち臨時1名)で多紀郡酪農ヘルパー利用組合をスタートしました。
 現在は、利用農家17戸、専任ヘルパー2名の摂丹ヘルパー利用組合となりましたが、この10年間近隣農家が廃業し、ヘルパー組合の運営が厳しく窮地に陥り、点在化する他地域の生産者に働きかけ、加入促進することで現在の組合になりました。また、農家・ヘルパーの傷病や事故など不測の事態に直面し、現行システムの課題が明確化され、その対策と教訓が今後の酪農ヘルパー事業の指針になろうとしています。
 兵庫県下を見渡しますと、11ヘルパー組合が活動していますが、未だ一部ではヘルパー空白地域があること。利用農家が少なく、専任ヘルパーが1名だけで緊急時利用や利用日の重複で希望利用ができない組合。複数ヘルパー要員でも稼働率維持による利用料金確保に奔走する組合。また、現在は円滑な利用と健全な経営の組合も、未来永劫継続する保証もなく激変する状況に対応できなくなる可能性もあるため、組合という狭義な視点ではなく、県全域での連携が不可欠であると痛切に感じています。
 このため、兵庫県下11ヘルパー組合が今後のヘルパー組合・事業の方向性を定めることを目的とし、「兵庫県酪農ヘルパー利用組合組織強化推進協議会」を平成14年に発足し、少なくとも次の課題を早急に解決すべく取り組んでいます。
・県下生産者のヘルパー組合全戸加入。
・ヘルパー利用希望日に緊急対応できる弾力的な利用形態への移行。
・完全ヘルパー制の実施。
・組合広域化の推進。
・組合の垣根を越えた広域派遣ヘルパー制度の確立。
・ヘルパー要員の技術と意識の向上。
 特に、組合の広域化及びヘルパーの広域派遣は、健全な組合運営のみならず、広域派遣することで、生産者の希望に少しでも応え、生産基盤の強化を図るためにも、環境整備の一環として県・県酪連と協議しながら、早期に酪農ヘルパー広域派遣制度を確立させたいと考えています。
 このように、解決すべき課題は山積していますが、閉鎖的で自己流になりがちな農家の作業形態が、酪農ヘルパー事業を通じ、よい刺激を受け柔軟かつ可動的なものになり、利用農家とヘルパー要員が共に向上することで解決できると考えています。
 最後に、円熟化しつつも多角的な業務を求められがちな酪農ヘルパー事業が、今後、新規就農者も含め酪農後継者育成の土壌作りに不可欠な事業として、また後継者不在の高齢な生産者にとっては、よきパートナーとして酪農と共に発展していくことを願っています。

熊本県

酪農業の発展に貢献するヘルパー事業

熊本県酪農ヘルパー利用組合 組合長 中村 一穂
 熊本県酪農ヘルパー利用組合は平成3年に発足し、以後13年が経過しました。この間、ヘルパー職員も8名から34名に増え、利用額も4倍強の1億9千万円程度となりました。
  利用者である私たち酪農家にとっては、定期的な休日の確保、病気や怪我等が発生した時の緊急利用が可能となり、ゆとりと魅力ある酪農経営の一助として大きく貢献してきました。
 しかし、農業への補助金が縮小傾向にあるなか、ヘルパー事業も同様に組織運営体制強化事業等の廃止が決定し、その分は基金の取り崩しによって対応していくことになりました。
 時代の趨勢とはいえ、組織運営を任されている者にとっては、強い危機感を持って取り組んでいかなければなりません。
 その意味でこれからは、補助金頼みの経営では事業が継続できないことは明らかですので、組合も一層の努力が必要であり、また利用者(組合員)にも応分の負担をお願いし、ヘルパー職員も意識改革を図り、本当の意味で酪農業に貢献するための真摯な気持ちで取り組んでいかなければ、この時代には生き残れないものと考えています。
 次に、酪農ヘルパー事業を取り巻くもう一つの環境の変化として、酪農従事者の高齢化や近年に見られるメガファームの台頭等によって、ヘルパー事業に対する新たなニーズが出てきたように感じられます。
 特にメガファームの出現は、従業員を新規に雇用するケースが多く、酪農家は使用者としてより一層の経営感覚が求められるようになってきました。そして、その労働資源のひとつに酪農ヘルパーがあり、人的・質的要求がより一層強いものになってきたように思います。
  そこで今般、当組合では、料金体系の見直しとヘルパー出役の予約登録や利用実績、職員給与等が一元的に管理できる事務電算化へ移行させることによって、一層の事業の充実を目指しています。
 まず、利用料金の改正は、現行の複雑な料金体系を分かりやすくするとともに、大規模経営農家への負担額を若干軽減できる仕組みになっています。また、電算化については、事務の簡素化はもとより、業務に精通していない職員でも出役に係る申込状況の確認や予約登録が可能となるシステムを構築中です。
 加えて、サービスの向上に対しては、ヘルパー職員の育成が何よりも不可欠ですので、それぞれが常に原点に立ち返り、酪農業の発展に大きな役割を担っているという気持ちを持ち続ける必要があります。
 いずれにしましても、地域に密着した事業として、人も牛も満足できるよう、「信頼」と「誠意」を理念に組合と組合員、そしてヘルパー職員が三位一体となって事業の充実に努めていくことが重要だと思っています。


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